妊娠・授乳中の服薬について 1月号のつづきです。
胎児、あるいは乳児に対する母親の服用している薬の影響が話題になり、最近は夫が服用する薬まで心配するというナンセンスに近い騒ぎにまでなっています。しかし、この流れは医療の現場においては、意味のない投薬中止や服用拒否、果ては中絶にまで結びつくおそれがあり、重大な問題です。新薬が開発され実際に世に出るまでには、いくつもの関門を通らなくてはなりません。最後はボランティアを募り人間に試用します。例えば抗がん剤など時々新聞広告でボランティアを募集していますね。しかし、赤ちゃんがお腹にいるお母さんに薬を飲んでもらい、流産、奇形などの異常が生じるか否か確かめることなど出来るわけありません。応募する人もいませんよ。すると薬の説明書には、「妊娠、授乳中の方に対しての安全性は確立していない。」という添え書きが付けられる結果になります。それは現場の医師にも患者さんにも「危険である」と過剰に受け取られてしまうことになります。正しくは、「使用したことがないので判らない」という意味でしょうが・・・。
前置きはこの位にして。新生児の先天異常は、どの調査によっても昔から1〜3%の範囲です。明らかな先天異常出産が増えたのは、近くは「サリドマイド睡眠薬」、「チェルノブイリ原子炉事故」、少し前では「風疹」後の場合くらいで、これ等の異常を除いた統計は1〜3%の範囲に留まるのです。現在、これだけうるさく薬に留意していても、薬にルーズだった昔でも統計上は自然に生まれる先天異常率は変わりません。・・・ということは、「実際に使われてきた殆どの薬は問題がなかった」とも言えるのです。
具体的な例について考えてみましょう。あなたが妊娠しましたが、気付かずに・・・(急性の病気)風邪、花粉症のために、抗生剤、鎮痛剤、抗アレルギー剤など、の薬を飲んでしまった。(慢性の病気)糖尿病、アトピー、バセドウ氏病、リュウマチ、てんかん、などで、どうしても続けないと困る薬がある。どうしましょう?さあ、答えは?・・・難しいでしょう。実は、答えは全てOKでもなければ、NOでもないのです。問題はあるが薬を続けた方が望ましい場合もあり、さらに服用時期、期間、量、病状の軽重で答えは違ってきます。
私達人類は、何年もかけて、妊娠と薬の危険性について知識を積み重ねて来ました。それなのに、過大に見積もられた危険性ばかり独り歩きして、安全で有効な薬の服用が邪魔されているとしたら残念なことです。
前号院内だよりで触れましたように、「何?妊娠?薬は即止めなさい。」なんてアドバイスする医師はどうも信用できません。患者さんと一緒に悩み、考え、判らなければ、「判らない。」と言ってくれる医師はむしろ頼りになるでしょう。
実は私も自信がないのです。
豊かな知識をもとに、妊婦と薬について相談に乗ってくれる施設は少ないのですが・・・以下に御参考までに記しておきます。
1・国立育成医療センター;TEL5494−7845 妊娠、授乳と薬相談外来
1・虎の門病院;TEL3588−1111 妊娠と薬相談外来
1・聖路加国際病院;TEL3541−5151 妊娠と薬 相談クリニック
せっかく授かった赤ちゃん、安心して産みたいですね。
院長 菅家 元
追記;文中の一部は、04/12/19付、読売新聞「くらし欄」から引用させていただきました。 |