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幼児の のどの異物 について
もう20年も前のことです。ある日の夕方「先生、助けて下さい。」と悲鳴の叫び声とともに若いお母さんが混雑する待合室を突っ切って診察室へ飛び込んで来ました。両腕には頭と四肢をダラリと下げた2才位の赤ちゃんを抱いています。赤ちゃんはとみれば、意識なく顔は真っ白、呼吸は止まっており脈も触れません。急いで着衣を脱がせながら経緯を聞くと、「ほんの4〜5分前までイチゴを食べていた。」というのです。きっとイチゴがのどにつまったに違いないのです。とっさに私は母親に両足首を持って吊り下げるように持たせ、赤ちゃんの背と胸を挟むように、一度、二度と叩きました。とたんに親指位のイチゴが口から吐き出され、呼吸が戻ると同時に顔色はみるみる紅色となり泣き始めました。西陽の射し込む診察室に響くお母さんの嬉し泣きの声と涙、待合室から心配そうに覗き込んでいた皆さんの歓声が溶け合った感激の一刻を私は生涯忘れることはできません。
私自身、先輩から「茶のみ話」の折に聞いた知識が役に立ったのです。経験があった訳ではないのです...。そんな場合、口の中を捜したり、指を突っ込んだりして時間をかけていれば死んじまうよ..。全くその通りで、後日調べてみると、3分で危険になり、5分で植物人間?と文字通り「秒」を争う場にいたんですね。
さて、本題に戻って...
「年齢」 幼児が「のどの異物」の騒ぎの起きる年齢はおよそ3歳までです。よく動き出す、ハイハイ、伝い歩き..。何でも口にする頃ですね。
「異物の場所」 口に異物が入ると、気道に入るか食道に入るか、の2方向に分かれます。いずれも緊急事態ではありますが、前者は例にも述べたように時には時間との勝負になることがあります。後者も緊急対処は必要ですが、前者よりは時間的余裕がある場合が多いのです。
「異物の大きさ」 トラブルを起こす異物の大きさは、親指と人差し指で作る大きさ...10円玉大..位までのもの。
「幼児の口に入る異物で最も多く危険な物」 我国ではタバコ(又は灰皿の水)です。他の危険な物:洗剤、殺虫剤、消毒剤など。他によくある異物:プラスチックのおもちゃ。(レントゲンに写りにくい)
「食物」 イチゴ、ブドウ、プチトマト、リンゴ角切りなど。その中でも特にピーナッツ!..食物の中で最も危険で特別な物がピーナッツです。これが気管支や肺に留まると肺の組織に孔があき、重大な結果を生じます。
「異物の症状」
<気道の場合> 主気管支の入り口につまった「窒息」はさておき、気道に入った場合は、当初は咳が出ますが、やがて治まり肺炎を繰り返します。事情を知らない小児科の先生ですと、ぜんそく、気管支炎などの診断で治療が続けられることがありますから、思い当たることがあれば先生に伝えることが大切です。
<食道の場合> 食欲がなくなります。少量食べては吐いたりします。近医へ相談しましょう。
・明らかに毒物を口に入れた可能性がある時は出来るだけ早く「毒物センター つくば市...24時間対応」へ相談してください。勝手に何か飲ませたり、吐かせたりしてはいけません。
以上まとめ ・「ちっそく」は3〜5分が勝負ですから例に挙げた手段をちゅうちょなく行う。連れ回していたら死んでしまいます。
・気道、食道どちらの異物でも、呼吸が確保されていれば、先ず落ち着け。次に上述の手段で対処する。
・タバコは、赤ちゃんに恵まれたら一家で止めましょうよ。
・ピーナッツは3歳までは幼児のまわりから遠ざける。(危険物)
・肺炎の繰り返しは一考してみる。
せっかく授かった赤ちゃんを大切に育てましょうね。鼻の異物は次回以降に改めてお話しましょう。
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