◆[院内だより5月号] 〜患者様の健康のために〜
 ◇院長より

初夏の風薫る五月、気持ちの良い季節になりましたね。私事ですが、二月初めに体調を崩して緊急入院するはめになり、二、三、四月と花粉症で多忙な季節に患者さんには大迷惑をかけてしまい申し訳なく思っております。幸いその後の経過良く、連休明けには診療に戻れると思います。あたたかいお見舞いのお便りを沢山頂きありがとうございました。

 さて、最近の新聞にも何度か取り上げられたので目にされたと思いますが、4歳の子供ののどに割り箸が刺さり死亡した事件の判決が載っておりました。(3月28日)

 原告(患者)・被告(医師)双方の申し立ての大要を述べますと・・・
原告;医師が早期より正しい対処(診療、治療、入院等)を行っていれば、救命し得た。不適切な対処が死亡の原因である。=過失致死罪に相当する。
被告;当方の対処に過誤はなく重傷度からしても、死亡は防げなかった。=よって無罪。

 ところが裁判所の判決は「無罪」ではありましたが、判決理由、内容を検討してみますと少々予想と違っておりまして・・・被告の対処は充分とはいえなかったと医師の手落ちを指摘しております。しかし判決は「無罪」。何故だろうと読み進んでみると、救急外来に運ばれてきた時の患者の受傷の程度は、司法解剖所見、その他症状から作られた鑑定結果は「非常な重傷であって仮に当初より充分な医療が尽くされても救命はし得なかったであろう。」と結論しており、これが「無罪」の根拠となっています。

 言い替えると医師のミスがあろうとなかろうと患者の死は必然であり、従って過失致死罪にならぬ、という理屈です。もし、患者が短時間(夕方6時来院、翌朝9時半死亡)で死亡ではなく一週余も生存したら、かえって「医師の手落ち」の部分に焦点が当てられ、判決も違っていたかもしれません。(過失致死罪成立?)
 いずれにしろ原告、被告双方にスッキリした終幕とはならなかったのです。

 私は立場上七年前から折に触れ事件の経過を追ってきましたから、裁判の結果に重大な関心があったのは勿論です。しかし、それとは別のことで小さい「ひっかかり」がずーっと続いているのです。で、最後に皆様に一つ質問があります。・・・
「あなたのお子さんが箸をくわえてヨチヨチ歩いています。・・・笑って見ていますか?」
「遮断機が下りた踏切の前で子供の手を離しますか?」そして仮に大怪我をして医師のミスも重なり不幸な結末になった場合、医師を訴えるだけで悲しみが償われますか?この七年間「事件」についての新聞、雑誌等の中で、私の耳、目に触れた範囲では「保護者責任」に言及した報道と原告の反省の記事を知りません。悲しみ、恨みは何らかの形で昇華されてゆくのが望ましいのですが、自分の非、相手の心境も思いやって、話し合いで円満解決するようひとごとながら祈ってる次第です。


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