小児滲出性中耳炎で治療を受けていらっしゃる皆さん、これはどういう病気なのかは医師の詳細な説明やパンフレットで充分な知識を得ていることと思います。でも、私の永年の経験で、これらパンフレットなどでは大事なポイントが抜け落ちている印象があります。この抜け落ちた部分をお話ししたいと思います。
小児滲出性中耳炎は治りますか?この問いは最も重要な問いでしょう。答えは・・・・
100%治ります・・・のど・はなの奇型など、特別な条件が無ければ必ず治ります。
中耳炎は急性中耳炎と滲出性中耳炎があります。前者は激しい耳痛と時に熱を伴い、親を慌てさせます。昔はかなり危険な病変(例えば脳膜炎の併発)と恐れられていましたが、抗生剤のお陰で、近年はあまり問題とならなくなりました。替わって後者(滲出性中耳炎)が増えて参りました。中耳腔に滲出液の貯留状態が続き、症状は難聴のみですから、幼児では見逃されている場合も多いのです。治療に際しては化膿ではなく、炎症ですから抗炎症剤を用いたり、はな・のどの治療、扁桃・アデノイドも処置の対象となります。
小児滲出性中耳炎の治療はしばしば長期間かかるところから、以下の問題が起こってきます。 外見上さしたる症状がないのに長期間通院させられている・・・医者を替えてみよう・・・替えて良くならぬ・・・また他へという悪循環!! たまたま替わった医院でやっと治った。その先生は名医!!となったりして。小児滲出性中耳炎は正しく鼓膜を診る技術があれば、前述のように軽い処置や経過観察で充分で、治療のやり方も殆んど医師間で大差ないのですから、医院から医院と渡り歩くのはあまりお勧めしません。
先に「滲出性中耳炎は治りにくい」・「長期間通院」と述べましたが意外と治り易くもあるんです。極端なことを申せば、放置したって年齢が7~8歳になると治ってくるんです、ならなくなるとも言えます。秋の就学時検診で小児滲出性中耳炎を見付けて受診を勧めた子供が、春の全校身体検査でケロリと治っている。しかも何も治療しなかった・・・なんてケースはしばしば見受けます。 冬季~春先まで治らないのが初夏になったらいつの間にか完治しているなど、自然治癒が多いのです。
では、時々来院して頂いて何を診ているかと申せば・・・大事なことは二つあって一つは、難聴のチェックです。特に2~3歳児の場合、言葉の発達に影響しますし、もう少し年齢がすすむと難聴による知識の遅れや時にいじめなどに関係して来ます。 もう一つは鼓膜の変化と貯留液の性状を診ます。貯留当初はサラサラだったのが時を経て粘稠な液に・・・丁度マニキュアの蓋を閉め忘れた様に・・・変化していることがあります。これは鼓膜の癒着の心配があるので切開したり、反復すれば扁桃・アデノイドの手術を勧めることもあります。
まとめ
・小児滲出性中耳炎は100%治る。
・治癒する迄長期間かかることもある。
・自然治癒もあるが、反復・再発もしばしばある。
・短期で医師を変えないで信頼して任せる。
・やたら色々な処置をするのでなく、しっかりした経過観察も正しい治療である。
・しっかりとした経過観察が、その後の治療計画を決める上で重要である。