帯状疱疹は以前はわりと珍しい病気という印象でしたが、最近は人口の高齢化も影響して患者さんが増えており、耳鼻科でも時折見かけるようになりました。原因は昔にかかった「水痘(みずぼうそう)」のウィルスが脊髄の神経に潜伏していて、宿主が体調不全・免疫力低下になったり、ウィルスの再感染により、一定の末梢神経の支配域に沿って赤色小水疱を帯状に生じます。
発現場所は主に肋間神経(すなわち肋骨に沿って)か三叉神経に沿って発症することが多いのですが、他にも体幹・四肢などにも生じます。
発症に1~3日先行して(先行・・・キーワード!! 憶えておいてください)局所に疼痛のみが生じます。その後に出現する疱疹と引き続く痛みには、以前は主として対症的に治療しておりました。しかし、疱疹完治後も後遺症として執拗な神経痛が何ヶ月~何年も患者を悩ませることがしばしばでした。現在では新しい抗ウィルス剤の早期使用で、速やかな回復と後遺症から救われるようになってきました。残念なことにしっしん、かぶれ、おでき他と誤診され早期投与が遅れることがあります(後述)。
一般的なお話は以上ですが、耳鼻咽喉科ならではのポイントを特に三叉神経についていくつか付け加えてみます。
三叉神経はその名が示すように大まかに三本の枝で顔面の感覚を支配しています。顔面の上から第一枝は頭皮・額(ひたい)の辺り、第二枝は頬・眼の周り、第三枝は頬・口の周り・下あごを領域とします。特に第二枝は痛みが1~3日先行した場合に(キーワード!!)、注意深く診ていないと中耳炎や耳介のおできと誤診したり、初発の小水疱を見落としたりして投薬が遅れることになります。また角膜の病変も気配りが大切です。更に、このような症状にとどまらず、顔面神経麻痺・内耳症状(難聴・めまい)・味覚障害が合併することがあり(ハント症候群)、帯状疱疹が三叉神経第二枝領域に生じた場合は、何よりも初期の迅速な対処が必要なのです。第三枝では口内の疱疹を見落とさないようにします(皮膚だけではありません)。
まとめ
•帯状疱疹は脊髄に潜伏していた「水痘(みずぼうそう)」のウィルスが犯人である。
•水疱などが出現する前に痛みが先行する。
•帯状に神経の走行に沿って水疱が生ずる。
•水疱もさることながら激しい神経痛が主症状である。
•早期の抗ウィルス剤の投与が肝要である。これにより・・・迅速な症状の改善・長く続く後遺症にならずに済む。
最近は水痘ワクチンが予防に有効で諸外国では使用されていますが、残念なことに日本では広く普及するまでになっていません。