文字通り睡眠中に呼吸が止まることです。睡眠中に無呼吸になると、脳は酸素不足になり充分な睡眠がとれず、翌日の日常活動の妨げになります。長期間続けば後で述べるように健康にも悪影響が出てきます。SASの定義は一晩の睡眠中に「10秒以上の呼吸停止が30回以上出現すること」となっていますが、それによって生ずる病的な状態を含めて語られることが多いようです。一例を挙げますと、先日新幹線の運転手が居眠りをして停車駅を通過する事故がありましたが、調べたところSASが強く疑われています。
SASは形態上や機能上の異常で上気道が閉鎖して無呼吸が生ずるのですが、小児では扁桃肥大・アデノイドが原因の場合が多く、成人では更に鼻の病気・高血圧・動脈硬化・糖尿病・高コレステロール血症・肥満症などの成人病が背景に加わってきます。またSASが続くことにより新しく肺高血圧(心臓に負担がくる)・心疾患等が生じてきます。
以上まとめてみますと・・・
SASの症状は睡眠中に呼吸が止まる症状ではありますが、具体的には患者のほぼ100%で「いびき」が伴いますから「いびき」があればSASを疑ってみる必要があります。昼間の眠気も見逃せない症状です。SASの精密診断をするには入院して脳波・心電図・筋電図・眼球運動・呼吸・血中酸素飽和度などを一晩中モニターして調べます。費用は5~6万円位かかります。簡易精査として家庭用モニターを貸し出して自宅で一晩データをとってもらい調べることもできます。多くは無呼吸の回数と長さ・血中酸素飽和度の濃度などですが、軽症はさておきスクリーニングとしては(危険ないびきかそうでないかを判断するには)役立ちますし、費用も1/10程度で済みます。疑わしい場合は先ずこの検査を受けてみることをお勧めします。当院でも貸し出しを行なっており(予約制)、最近の2年間で約200人の患者さんが検査を受け、その30%が重症例(危険ないびき)で専門病院での精査の後、何らかの治療が必要な方でした。
上に述べましたように「デカイいびき」と笑っている場合ではありません。不十分な睡眠は不健康のもとと理解して検査や治療を受けましょう。
註;SAS=Sleep Apnea Syndrome SASには閉塞型(主にのどのあたりで閉塞し肺に空気が行かない)と中枢型(脳からの呼吸命令が筋肉に来ない)がありますが、大多数が前者(閉塞型)なのでここでは閉塞型について述べました。