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口臭の話
どんな美しい魅力的な人でも近づいた途端にくさい口臭があったのでは「百年の恋」もさめてしまいますね。私達、耳鼻科医(歯科・眼科医)も口臭には参っております。口臭(体臭もそうですが)には2タイプあります。
(タイプT)・・・口臭があるのに自分では気づかない型。非常に大事なポイントですが実際に口臭のある人の多くは自分では「くさい」と感じません。例えば「ギョウザ」を食べた本人は「くさい」とは訴えません。食べなかった周囲の人が「おまえは臭いよ」と申します。私の経験ですが鼻や口腔癌の末期の患者さんの回診・処置に行きますと壊死した組織から発する臭気はどんなに消毒・清拭・換気をしても部屋や寝具に充満します。ところが患者さん本人は全く苦にしないのです。よく外来で遭遇するのですが、オーデコロンを浴びるように振りかけてみえるご婦人がいらっしゃいますが、眼にしみる程の匂いで私の鼻毛が白髪になるかという位ですが本人は慣れてしまっているらしく平気なんですね。すなわち「口臭のある人は通常自分では訴えることはない」となります。更に周囲の人も率直、露骨に「あなた臭いよ」と言いにくいですしね。ですから、自分でなく他人に指摘されて来院する人が本当に「口臭のある人」なのです。
(タイプU)・・・自分から「口臭がある」と訴える型。その多くは実際には所見に乏しく口臭も無く正常な例が多いのです。このタイプも外来ではしばしばみられます。若い人に多く、「神経症」と考えられ耳鼻科よりはむしろ精神科で扱われるべき疾患なのですが、後に述べますように治療はなかなか難しいのです。前述のように一般に口臭を有する人は自身は口臭に対しては自覚が乏しいのが普通で、むしろ口臭を訴える方が異常な反応なのです。一例として診察の結果特記すべき所見なく、口臭も認めない16歳高校生を挙げてみますと・・・「私(高校生)の口臭は非常に臭いと思うのです」なぜなら証拠として・・・「私がバスに乗ると乗客が一斉に顔をそむける」更に「次のバス停で何人かが降りてしまった」「友人と会話中に彼は度々顔をそむける動作をした」・・・第三者が聞けば奇妙・滑稽極まりない話ではありますが、本人は真剣、訂正不能の確信のうえに訴えており、精神科受診など納得する訳もないのです。彼からみれば「筋の通った?証拠」をそろえて訴えているのに判ってくれぬ医師・・・すなわち私はヤブ医者となってしまいます。16歳位の年齢は「他人が自分をどう見るか」を非常に気にする時期でもあり、たまたま「おまえ口臭いよ」の一言をきっかけに自己臭ノイローゼに陥ることが多いのです。
以上2タイプの口臭症のうちタイプUは神経科に回ってもらうのですが、既述の如く対処は難しく耳鼻科とも協力して「ドクターショッピングや誤った治療の反復」、「口腔消毒薬などの乱用」、「対人恐怖症、嫌人症、ひきこもり」等までこじれないうちに対策を考える必要があります。詳細については他日に譲ります。
[タイプTの治療について]しばしば胃が悪いと口臭があると申しますが胃の逆流・ゲップは一瞬の事象で長続きするものでなく世間で言われている程原因とはなりません。「口が臭い」ということは口の中に臭気の元となるものがあり、主役は細菌です。健康な口内なら悪臭の生じない常在菌が適量存在しており、唾液などで自浄化され口臭はありません。虫歯、歯槽膿漏などが悪臭細菌群の「すみか」になります。不潔な入れ歯も一因です。それでは口臭消毒剤はどうでしょうか。それは一時的に細菌の活躍を抑えても根本治療にはなり得ません。また乱用により必要な常在菌を排除したり、使いすぎ副作用による口内炎も怖いのです。以上から歯の治療が大事なのです。
一方、口内の清潔を損なうような成人病・・・糖尿病や肝・腎疾患(体臭にも関係します)も見逃せません。耳鼻科的には「口呼吸」を生ずる疾病が最も注目です。鼻の病気、扁桃・アデノイドなどがあると口腔乾燥と口腔内雑菌の侵入で口腔が不潔になり口臭が生じます。口呼吸の幼児の口がとても臭いのはこの理由によります。幼児では鼻の異物も留意すべきですね。
(まとめ)他人、特に身内から「口臭あり」と言われたら、もう決定的!!嫌われないよう口臭治療を受けましょう。
(追記)体調を崩して2-4月とお休みしご迷惑をおかけしましたが5月より少しずつ診療に復帰します。よろしくお願いします。
院 長
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